接地工事の種類と選び方
接地工事は、感電や火災から人と設備を守るための基本中の基本です。電技解釈では設備の種類や電圧区分ごとにA種〜D種の4種類が定められており、求められる接地抵抗値や接地線の太さもそれぞれ異なります。ここでは各種接地工事の違い、現場での選び方、接地抵抗測定の手順、抵抗値が下がらないときの対処までを実務目線でまとめます。
1. 接地の役割と重要性
接地(アース)には大きく分けて次のような目的があります。
- 感電防止:機器の金属外箱に漏電が起きた際、人体ではなく接地線へ電流を逃がす
- 漏電遮断器の確実な動作:地絡電流の経路を確保し、ELBが規定時間内に動作できるようにする
- 異常電圧の抑制:高圧側との混触時に低圧側電位が異常に上昇するのを防ぐ(B種の役割)
- 静電気・雷サージの放電:制御機器や通信機器の誤動作・破損を防ぐ
接地が不完全だと、漏電遮断器が付いていても動作しなかったり、機器の外箱に触れた瞬間に感電するといった事故が起こり得ます。「ブレーカーが落ちなかった」事故の多くは、接地に問題があったケースです。
2. 接地工事の種類(A種・B種・C種・D種)
電技解釈第17条で定められている接地工事は次の4種類です。
| 種類 | 主な対象 | 接地抵抗値 | 接地線の太さ(軟銅線) |
|---|---|---|---|
| A種 | 高圧・特別高圧機器の鉄台や金属製外箱、避雷器など | 10Ω以下 | 2.6mm以上 |
| B種 | 高圧/低圧を結合する変圧器の低圧側中性点 | 計算値による (150/I など) |
2.6mm以上(高圧/低圧) 4.0mm以上(特高/低圧) |
| C種 | 300Vを超える低圧用機器の鉄台や金属製外箱 | 10Ω以下 (0.5秒以内に動作するELB併用で500Ω以下) |
1.6mm以上 |
| D種 | 300V以下の低圧用機器の鉄台や金属製外箱、金属管・金属ボックス類 | 100Ω以下 (0.5秒以内に動作するELB併用で500Ω以下) |
1.6mm以上 |
B種は固定値ではなく、変圧器の高圧側1線地絡電流(I)と低圧側電路の遮断時間で決まります。基本式は 150/I [Ω]。混触時に1秒を超え2秒以内で自動遮断できる場合は300/I、1秒以内なら600/I まで緩和されます。現場で勝手に決める値ではなく、電力会社からの通知や設計図書の値に従うのが原則です。
接地線の太さ(参考)
上表は最低値です。実務では地絡電流や機械的強度の観点から、これより太いものを使うケースも多くあります。特にA種・B種では、メーカー仕様や設計図書に従い、IV14mm²・22mm²などが指定されることがよくあります。
3. 接地工事の選び方
選定は基本的に「電圧区分」と「機器の種類」で決まります。判断に迷う場面は少ないですが、現場で混乱しやすいポイントを整理します。
低圧機器の判断フロー
- 機器の使用電圧を確認する
- 300V以下ならD種、300V超ならC種
- 金属管・金属製ボックス・ケーブルラックなどの非充電金属部分も同じ基準で接地
混同しやすいケース
- 三相200V機器:線間200V・対地電圧200Vでも300V以下なのでD種
- 三相400V機器:300V超のためC種が必要
- キュービクルの外箱:高圧機器なのでA種
- キュービクル内の低圧盤:機器側はC種またはD種、変圧器中性点はB種
乾燥した場所に施設する対地電圧150V以下の機器や、二重絶縁構造の機器など、一部の条件下では接地工事を省略できる規定があります(電技解釈第29条)。ただし「省略できる=省略するべき」ではありません。安全側に倒すなら、迷ったときは付けておくのが現場の鉄則です。
接地極の共用について
A種・B種・C種・D種は原則として別々の接地極を設けますが、近接して施設する場合は条件を満たせば共用接地(連接接地)も認められています。ただし弱電や通信機器の接地と動力系の接地を一緒にすると、機器誤動作の原因になることがあるため、設計段階での確認が欠かせません。
4. 接地抵抗の測定方法
接地工事が完了したら、規定値以下になっているかを必ず測定します。使用するのは接地抵抗計(アーステスタ)です。
測定の基本:3極法(電位降下法)
- 測定対象の接地極(E)から一直線上に、補助接地棒2本(P:電位用、C:電流用)を打ち込む
- E〜Pは約10m、E〜Cは約20mを目安に離す(一直線になるように配置)
- 接地抵抗計の各端子にリード線を接続(E端子=測定対象、P端子=電位補助極、C端子=電流補助極)
- レンジを切り替え、測定ボタンを押して値を読み取る
簡易法:2極法
商用電源の接地側を基準にして、コンセントから2線で測定する方法です。補助接地棒を打てない屋内や、すでに通電しているコンセント回路のD種確認などで使われます。精度は3極法より劣りますが、現場の手早い確認には十分役立ちます。
- 補助接地棒は湿った土に深く打ち込む。砂利やコンクリート上ではまともに測れない
- リード線が他の金属に触れていないか確認する
- 測定中はバッテリー残量にも注意。電池切れで誤った値が出ることがある
- 同じ場所でも雨上がりと乾燥時で値が変わる。季節・天候の記録を残しておくと後々役に立つ
5. 接地抵抗値が下がらないときの対処
新設や更新工事で「規定値に入らない」というのは現場でよくある悩みです。原因と対策を順に整理します。
主な原因
- 土壌が乾燥している、または砂・砂利・岩盤など導電率の低い地質
- 接地極が浅い、あるいは本数が足りない
- 接地極周辺の埋め戻し土が不適切(瓦礫混じりなど)
- 接地線の圧着不良、端子部の腐食
改善方法
- 接地棒の追加・連結打ち:2m程度の接地棒を複数本、間隔を空けて並列に打ち込み、接地線で連結する。並列にすると合成抵抗は下がる
- 深打ち:地下の湿った層まで届かせる。連結式接地棒や打込み工具を使って数mまで延長する
- 接地抵抗低減剤の使用:接地極の周りに導電性の改良材を充填する。市販品では水分保持タイプや化学反応タイプがある
- 板状接地極の採用:地中に銅板を埋設する。岩盤地などで棒が入らない場合の選択肢
- メッシュ接地:広い敷地で接地棒を網目状に配置し、全体で低抵抗化する。受変電設備などで採用される
値が下がらないからといって、接地線を別の機器の接地に流用して測定だけ通すような対応は絶対にやってはいけません。事故が起きたとき、責任の所在がはっきりと自分に向かいます。下がらないなら下がらないなりに、書面で報告して対策を協議するのが筋です。
6. 現場で役立つアドバイス
- 図面と現物の整合確認:竣工図に書かれた接地種別と、実際の盤内表示・端子記号(E、PE、Gなど)が一致しているか必ず突き合わせる
- 圧着・締付けの確認:接地端子のゆるみは漏電遮断器の不動作に直結する。トルクレンチでの締付け確認を習慣にする
- 銅と鉄の異種金属接触に注意:屋外で銅線を鉄製のものに直接接続すると電食が進む。圧着端子+ボルト接続で確実に分離する
- 接地極の位置を残す:埋設後は位置がわからなくなる。竣工図に距離を明記し、可能ならハンドホールを設けておくと後の点検が楽になる
- 定期測定の重要性:接地抵抗は経年で変化する。年次点検時の測定値を記録しておき、傾向を把握しておくと劣化の早期発見につながる
接地は仕上がってしまえば見えなくなる部分ですが、いざというときに人命を守る最後の砦です。「とりあえず付けた」で済ませず、根拠を持って施工することが、結局は自分と仲間を守ることにつながります。
免責事項
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